ストリートファッションを立ちあげた起業家シャネルはモードの魂を時の翼にのせてきらめかせた。名声を永遠のものにしたブランドは同時に「現在」を売らねばならない。一着のドレスは、魅力的な、つかの間の作品であって、不滅の芸術などではない。モードは死ななければならないし、それも早く死ぬ方が商売にはありがたい。モードというものは、はかなければはかないほど完全なのだ。はじめから無い命をどうして守ったりできるだろう。自身の伝説は永遠に、しかし商品は現在のものを。この意味でシャネルブランドは二重底にできている。ルイ・ヴィトンやエルメスの商品とちがって、シャネルは商品がずばり洋服だから当然のちがいかもしれない。あるいはまたこういう言いかたもできるだろう。エルメスは職人生産という少量生産システムによって希少性の神話をうちたてたが、シャネルはシーズンという限定性をとおして希少性を売っている、と。メディアをとおして名声を永遠のものに高め、それでいて商品はシーズン毎に更新して希少性をキープする。ストリートから生まれたこのデザイナー・ブランドは一筋縄ではゆかないのである。
ヨーロッパの女性たちは自分の人生のパートナーを見つけるのと同じくらい、自分の足に合う靴を選ぶのに時間をかけます。靴がぴったりとフィットすれば、自然と歩き方も立ち姿も美しくなるからです。それだけではありません。「地に足がつく」の言葉通り、軽やかでいてふらつかず、「自分」というものをしっかり持つということを、とても重視しているからです。あなたも、この靴を履くとなぜか落ち着く、キリッと気が引き締まる、というような一足に出逢った経験があると思います。そのように、履き心地だけでなく精神的にも大きく影響する靴ですから、上質な靴、自分の足にフィットする靴を探して慎重に選ぶのは基本です。日本でもそうですが、欧米では特に、初対面のとき、相手の靴でその人となりが判断されてしまいます。手入れの行き届いていない靴を履いている人は、それだけでルーズな人と見なされ、ビジネスにも大きく影響します。パリの女性たちの問では、毎週日曜日は靴の手入れをする習慣があり、爪先から踵、靴裏まで徹底して磨きをかけます。質の高いブランド物を惜しみなく買い求め、一足一足愛情を持って接するのです。こちらは前出のバッグの話と共通するということは、すでにおわかりでしょう。人生のよきパートナーは、まさに磨き抜かれたバッグと靴にあり、なのです。
ヘリンボーンのジャケットの色は黒白の中間色であれば、グレイの濃淡にかかわらず、黒がもっとも襟元を引き締める。こざっぱり感にも通じる。ただし、どんな替え上着のコーディネイトにせよ、初めにシャツを選択し、ネクタイを先行させないこと。これは基本である。ネクタイは、ネクタイだけでは何の役にも立たないからだ。ここで黒と断定しているのも、シャツが白であることをひとつの前提にしている。次に、素材である。シャツの選択同様、カジュアル感の表現のために、毛ばだち感のあるものがよい。ニットやカシミアの類だ。黒のニットのタイ。これが正解である。ややワイドと述べた理由は、よりカジュアルな遊びを表現するためで、細かなことをいえば、大剣の幅が、10・5センチ程度がよい。チャートでは、パンツについて触れていないが、パンツはフランネルがよい。ジャケットより濃い色を選択する。靴は黒の紐つきかローファー、または紐つきの茶のスウェードである。