住んでいた家はクローゼットも押入れの中も亡き奥さんのモノで埋まっていたのだが、奥さんが本当に大事にしていたピアノだけを残してほとんど処分してしまったのだ。完成した家に入居したとき、その男性はほとんど身一つの身軽さだった。「いやあ、さっぱりしました。妻に申し訳ないようでなかなか手をつけられなかったんですが、始めてみればどうということもないモノばかりだったんですね」。苦笑する彼の顔は、本当に憑き物が落ちたようにさっぱりしていた。
[参考サイト]
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新たな家づくりにはそんな効果もある。家中のモノを整理することで六十年間の人生を一度、御破算にする。心身ともに身軽になる。そうすれば「これでもう、いつでも死ねる」と思えるくらいすっきりする。しかし、そこで満足してはいけない。「いつでも死ねる」と思っても、まだ死ぬわけではない。これから先、さらに二十年、三十年、人によっては四十年もの人生がある。あくせく働いた年月にも匹敵する時間である。その長い年月を、楽しく、幸せに、安心して暮らすために、六十歳でもう一度、家を考え直す必要があるのだ。